夢の中で夢を見ているような感覚 森見登美彦「熱帯」の魅力とは

『熱帯』(森見登美彦 著)  ボルヘスには実在しない本についてリアルに語る短篇があり、ボラーニョには謎の作家を探す大長篇がある。森見登美彦の新作も実在しない本とその作者についての物語でありながら、印象はかなり違う。タイトルは単純なのに、物語の構造が実に複雑なのは、作者が本作を、作中繰り返し言及されまた引用もされる「『千一夜物語』の異本」として書いたからだろう。  物語は、奈良に住む作者を思わす作

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