松尾諭「拾われた男」 #17 「お台場で連続ドラマの大役を初めてもらった日」

あれよあれよで同棲相手と婚約したはいいものの、役者の仕事どころかオーディションの話すら来ずに、そろそろ自分の置かれている状態に焦りを少し感じていた上京7年目の夏、久しぶりに来た映画のオーディションに、万全の準備をもって臨んだら、自己紹介で、滑舌の悪さゆえに、もともとうまく言えない自分の名前を言うのに、これでもかというくらい舌がもつれにもつれ、完全に覚えたはずのセリフは忘却の彼方へと消え去り、惨めで

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