戦中・戦後の熊本に暮らした猥雑で乱脈な一族の「愛憎絵巻」 2017/9/3 外道で色男 『現車』前篇、後篇の著者福島次郎は、戦中戦後の熊本市を舞台に猥雑で乱脈を極めた一族の家族史にして庶民史を確信的な赤裸々さで綴っている。 入れ替り立ち替り現れる人物たちはその容貌や背格好、あらゆる肉体的属性が細緻に刻印されており、著者による造形の部分もあるにしても想像力だけでは及ぶものではないから、ほぼ実像に近いものと思われる。 例えば「私」の母の三人目の夫となった曳地省吾について