最後ににじみ出る怨念の恐ろしさは出色 『迷路荘の惨劇』 (横溝正史 著) 2016/8/6 角川文庫 760円+税 横溝正史の金田一耕助シリーズの代表作といえば『八つ墓村』『犬神家の一族』『獄門島』あたりが定番だが、ディープな横溝ファンが飲みながら話すと、誰もが「じつはあれが好き」と告白する一作がある。『迷路荘の惨劇』だ。 富士山麓に建つ豪壮な洋館「名琅荘」。随所に抜け穴や隠し戸があるため「迷路荘」と呼ばれる屋敷では、二十年前、当主が後妻をめぐる痴情沙汰で惨殺されるという事件が起きて