児童虐待の相談は年間20万件以上。『罪の声』作者・塩田武士が描く、児童誘拐された少年の空白の3年間の意味
『存在のすべてを』(塩田武士/朝日新聞出版)
重厚長大な書物とはこういう本の為にあるような言葉だ。塩田武士『存在のすべてを』(朝日新聞出版)は、上質のミステリ小説でありながら、同時に、ミステリの定石を次々に覆していくような、志の高さと射程の長さが感じられる傑作である。塩田氏の代表作と言えば、第7回山田風太郎賞を受賞した『罪の声』(2016年)が度々挙がるが、子供が事件に巻き込まれる、という意味で