【小説】森鴎外がベルリン留学を決めた理由は細菌学の大家・コッホにあった? 2023/6/11 序章 明治二十一年(西暦一八八八年)十月 京都人どうしの会話について行けない様子だったが、そのとき不意に、大御門がことさら慇懃(いんぎん)な態度で森に話しかけた。 「そういえば、鷗外先生──」 京都人がイケズを仕掛けるときの顔だった。万条はにやにやしながら、森と大御門を見比べた。 「大先生が帰国した直後だが、ドイツ人の乙女が船に乗って、はるばる日本までやって来たそうじゃないか」 「え……」 突然振