なにやら様子がおかしい職人のおうね。そのため息の理由とは。――西條奈加「隠居おてだま」#9-3

※本記事は連載小説です。 >>前話を読む  冬は日が短く、手習いを終えた頃には、日はだいぶ西の空深くに傾いている。  豆塾の子供たちは、にぎやかに遅い昼餉をとっていたが、あれ、とてるは気づいた。 「おかしいな、いつもならすっ飛んでくるのに」  豆塾の顔ぶれに交じって、遅い昼餉を楽しみにしている者がもうひとりいる。職人のおうねである。細いからだに似合わぬ大食いで、ことに米の飯が大好きだ。毎食必ず

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