インチキ観光産業を築き、ネットの誹謗中傷で蓄財…ノーベル賞作家がリアリズムの手法で中国農村の70年史を描く
『遅咲きの男』(莫言 著/吉田富夫 訳)中央公論新社
莫言は中国農村の現実を魔術的リアリズムで描く作風により、2012年ノーベル文学賞を受賞した。同賞受賞後8年の空白を経てようやく刊行されたのが、本短篇集である。
表題作「遅咲きの男」とは、莫言愛読者にはお馴染みの虚構の村、高密県東北郷で、ノーベル賞受賞に便乗してズル賢こく立ち回る男である。人民共和国建国時、彼の家は貧しい雇農(雇われ農民)で