【「ドライブ・マイ・カー」評論】春樹ワールドを換骨奪胎し魂の救済を静かに謳い上げた、カンヌ脚本賞も納得の力作
今年のカンヌ映画祭の授賞式で、脚本賞に「ドライブ・マイ・カー」の名前があがったとき、周りでいささか落胆を示す海外の批評家たちがいた。彼らは本作がもっと大きい賞を受賞することを期待していたのだ。それほどこの作品の評価は高かった。
だが、よく考えれば脚本賞というのは理にかなっている。村上春樹の原作は短編で、これを179分の映画にするにあたって、濱口竜介監督と共同脚本家の大江祟允は大胆に物語に肉付けし