父を尊敬する娘はしばしば、父のようになろうとするのではなく…父と娘の関係のひとつの普遍的な姿
『星落ちて、なお』(澤田瞳子 著)文藝春秋
肉親の愛憎の複雑さと芸術の残酷さ。それらを余すところなく描いて心を揺さぶる、娘と父の物語である。
父は、幕末から明治にかけて活躍した河鍋暁斎(かわなべきょうさい)。花鳥画から風刺画までを手がけ、描けぬものはないと言われた絵師である。不敬の絵を描いて投獄されたり、行き倒れの死人の顔を嬉々として写生したりと、反骨と奇行で知られ、「画鬼」を自称した。