作家・熊谷達也が震災後に作中で伝えたかった本当の気持ち 2016/12/3 三陸、漁に出る男達のくらし 仙河海―東北は三陸、リアス式海岸の入り江に佇む港町の名前である。現在の人口は7万人弱。本作『浜の甚兵衛』の舞台となった町だ。物語の冒頭で、主人公、菅原甚兵衛が遭遇することになる明治29年の大津波があった当時は、人口が七千人ほどの小さな港町であった。とはいえ、そこそこ賑わっていたようだ。 町に賑わいをもたらす主役はカツオである。初夏になると一本釣りカツオ船が威勢のいい若者