【「すばらしき世界」評論】初の原作ものであり、西川美和のアウトサイダーものの集大成でもある
西川美和監督は、これまでデビュー作「蛇イチゴ」では香典泥棒を繰り返すセコい男、「ディア・ドクター」では僻村で働く偽医者、「夢売るふたり」では結婚詐欺師と、世間の片隅で、ささやかな悪行に手を染める者ばかりを好んで主人公に選び、いわゆる心温まるヒューマニズムを決然と拒否する、ひと筋縄ではいかない屈曲に富んだドラマを紡いできた。
今回は、初めてオリジナルではない原作ものに挑み、佐木隆三の「身分帳」をベ