“自分が渡す食べ物を食べてもらえない”主人公の物語がリアリティーを失わない凄さ 2020/6/2 『木になった亜沙』(今村夏子 著)文藝春秋 太宰賞受賞作「こちらあみ子」(受賞時のタイトルは「あたらしい娘」)を発表以来、今村夏子はずっと注視を受けつづけている。何人かの編集者に原稿を依頼したいのだがという話をされたこともあって、もしかしたら現在編集者が依頼したい作家の筆頭になるのかもしれない。 六冊目にあたる本書は三作収録の短篇集である。いずれも「異能」あるいは「特殊能力」にかんする作品で